もしも・・・この心さえなければ__
人形になりきれなかった人間
里にいるころから人間が嫌いだった。
母を殺し、父を殺した戦争を引き起こした人間が嫌いだった。
他人の力を妬み、弱いくせに集まって強くなっていると
思い込んでいる人間が嫌いだった。
人傀儡を作ることのできる自分を
周りと違うという理由だけで差別してくる人間が嫌いだった。
里にも興味などなかった。
唯一心残りがあるとすれば自分をここまで育ててくれた
チヨバアのことだが、それも薄いつながりで
すぐに断ち切れてしまう程度のもの。
そんな自分がたった一つ好きなものは傀儡__
永遠にその美しさを留め、自ら争いを起こすこともなく
操り手の意のままに動く意志をもたぬ人形。
いくつもの人傀儡を作るうちに自分も
傀儡になりたいと思うようになっていた。
人間を嫌うこの気持ちさえなくただただ
操られるままに動く人形であったら
どんなによかっただろうと何度も何度も考えた。
そして・・・ついに自分は自らの体を傀儡と変え里を抜けた。
それは20年以上も前のこと。
この心すらも捨てて傀儡になりたいと今も思う。
けれども自分が自分で動くためには心を捨てることはできなかった。
だから自ら感情を殺し人形になりきろうとした。
人形になっているつもりだった・・・・・・・
そして今。
一尾を手に入れそれを追ってきた木ノ葉のガキとチヨバアと戦っている。
チヨバアを殺せばいいはずだった。
チヨバアの攻撃をよけて懐に入ってしまえばいいはずだった・・・。
攻撃はすべて見切っていたはずだった・・・・
な の に
自分は最後の一歩を踏み切れなかった。
結局心を捨てることはできなかったのだった。
自分は人形になりたかった人間。
自分は人形になりきれなかった人間。
所詮はそんなものなのかもしれない。
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